レーザー薄膜照射実感

 近年、大パワーレーザーを固体に照射し、核子あたり数十MeV程度のイオンを得たという報告がミシガン大学[1]、ラザフォード・アップルトン研究所(RAL)[2-4]、ローレンス・リバモア研究所(LLNL)[5-7]からなされている。また多くの理論的な検討がある[8-10]。これらの実験は10TW以上のパワーと数百fs以上のパルス長を持つレーザーを用いている。この現象がより小型のレーザーにより再現できれば、加速器のイオン源/陽子源として利用できる可能性がある。そこで我々の研究室では、先に述べたレーザーより小型の1TW, 50fs, table-topレーザーを用いて実験を行っている。

研究室のレーザー  Table-Top Terawatt laser(通称T3レーザー)

SPEC
 ●結晶 Ti:Sapphire  ●波長 〜800nm  ●エネルギー 〜50mJ  ●パルス幅 〜50fs  ●強度〜50m[J]/50f[s]=1×1012[W]⇒1TW
50fsという短いパルス幅と1TWの高い強度をもつ、高強度短パルスレーザー

この写真が研究室のレーザーです。

実験の内容
 レーザーをレンズで集光し、薄膜に照射します。この時薄膜から発生する粒子を検出するために下図のようにイオン検出器CR39を配置します。薄膜、CR39ともに真空容器の中に設置しています。また薄膜はレーザーを照射すると穴があくため可動式になっており、レーザー一発ごとに新しい面が使えるようになっています。薄膜はマイラー、ポリプロピレン、アルミニウムを使用し、膜厚は0.8ミクロンから11ミクロンまでのものを使用しています。CR39上にイオンが飛んでくるとCR39に飛跡ができます。その飛跡を観測することによりイオンの方向分布などを調べています。また薄膜とCR39の間に磁石を設置し、軌道の逸れ具合から荷電粒子のエネルギーを測定したり、同時に電場をかけることによりイオンの特定を行おうともしています。下図の左は実験に使用している真空容器です。中央は実験のセットアップの簡略図で、右はレーザーを薄膜に照射した瞬間の様子を真上から撮影したものです。

参考文献
[1] A. Maksimchuk et al., Phys. Rev. Lett. 84 (2000) 4108.
[2] E.L.Clark et al., Phys. Rev. Lett. 84 (2000) 670.
[3] K.Krshelnick et al., Phys. Plasmas 7 (2000) 2055.
[4] S.P.Hatchett et al., Phys. Plasmas 7 (2000) 2076.
[5] R.A.Snavely et al., Phys. Rev. Lett. 85 (2000) 2945
[6] A.J.Mackinnon et al., Phys. Rev. Lett 86 (2001) 1769.
[7] A. Zhidkov et al., Phys.Rev. E61 (2000) R2224
[8] S.C.Wilks et al., Phys. Plasmas 8 (2001) 542.
[9] Apukhov, Phys. Rev. Lett. 86 (2001) 3562.
[10] B.G. Cartwright and E.Kshirk. Nucl. Instr. And Meth. 153 (1978) 457.
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